2017.10.05
研修旅行記1 重要文化財「聴竹居」
本との出会いは、15年前でしたでしょうか。
永く快適な住まいには自然との共生以外にはないことに気づき、様々な住まいを研究していた時でした。
そのようなときに昭和3年 約90年前にたてられた住まい 自然との共生にこだわった実験住宅があることをこの本で知りました。
まさに、私が目指していた住まいの理想の形がありました。
これまでも、寸法の入った図面をどれだけ参考にさせていただいたかわかりません。
(竹中工務店設計部編 「彰国社」)
今でも私の理想の住まいです。
先日、研修旅行で念願だった見学に社員さんみんなと一緒に、「住むラボ」研究で勉強させていただきました。
京都大学の藤井厚二先生が自宅を実験住宅として、5件目の集大成だそうです。
外観は軒が深く、日差しを遮り、軒下で増やされた空気が、家の中に取り入れる工夫に
なっています。
また、屋根の勾配を緩くして、周辺の環境をできるだけ壊さない工夫がされています。
しかし、見えない部分は屋根を2段にして、屋根裏の空気を利用して、換気や通風を考えられています。まさに自然科学を最大限利用しています。
壁は漆喰だそうで、この地の自然の土と同色になっています。
リビングから畳コーナーを見た写真です。
松のフローリングにすでに畳コーナーがあり、お茶の間につながっています。
壁と天井は和紙貼りになっております。
収納される神棚
マッキントッシュ風の時計
畳コーナーには仏壇があります。
畳コーナーの下は風洞になっており、この土地の風通りを計算して、家の中に涼しい風が入るようになっています。
リビングには以前はソファーが配されており、ご家族のだんらんの場所になっていたようです。
天井は直接光が入らないので、和紙の明るい色を使っており、それにより、空間が明るくなる効果と部屋の高さが協調されています。
天井にデザインされた照明は、大きさを微妙に変えて、遠近感で空間の広がりを見せています。
リビング南側にはテラスがあり、鴨川が一望できます。
テラスには柱が1本もなく、てこの原理で屋根を支えています。すごい技術で、伊勢神宮の名工が造ったそうです。
ガラスはドイツからの輸入ガラスです。
透明度がとても高く、ただ、大きさに制限があり、このデザインになっています。
床の下窓は風が抜けて、軒が深く何時間でもたたずむことができます。
ダイニングは東側で朝日が燦々と入り、家族が団らんする姿が思い浮かびます。
家具も照明もすべてデザインされています。
照明の横から漏れる電気が箔張りの天井を薄らと照らし、とてもきれいだったとのことです。
手前には小窓があり、キッチンからの料理がカウンター越しに配膳できるように工夫されています。
キッチンやお風呂、水廻りは白を基調に清潔にまとめられていて、生ごみのダストボックスやコンプレッサーむき出しの冷蔵庫まであり、当時としては最新式の画期的なキッチンです。
収納もたくさんあります。
2人のお嬢様の子ども部屋は造作でつくられており、障子をあけると南側の景色がテラス越しに広がります。
玄関横の客間は椅子の和室で、床の間も椅子用に少し高さを上げています。
床の間の上にある照明もお部屋と床の間を照らし、革新的な照明になっています。
藤井先生がつくった電気ストーブです。
上にお湯を沸かせるようになっており、その蒸気で部屋の乾燥を防ぐ役割をもっています